鼠獲りと塹壕戦
鼠獲りの罠を仕掛ける。
獲れてしまった鼠のハムスターのような可愛さに心が揺れる。
罠ごと溺死させるか毒餌で毒殺するなんてとても出来ない。
・放置して死なせてしまう(自己憐憫)
・他人に丸投げする(依存心)
・野に放つ(責任転嫁)
3/12に体調が悪くてジムを休みその晩から3/17まで高熱が出た。
それ以来4/19までずっと37℃後半の熱が続いた。一か月以上も。
熱による悪寒、節々の痛みと猛烈な倦怠感。咳と喉の痛みで風邪の症状だ。
医者はいった。
まあ風邪だ、だがひと月も熱が続くのは異常だ!
だが様々な検査の結果は取り立てて悪い兆候はない。
ならいいさ、そのうち治るさ。
でも仕事はずっとしていたから死ぬほど辛かったし、それも長期化の要因だったのだろう。
ところが4/19の未明に猛烈な左胸の痛さで目が覚めた。
ついに終わったのか。
痛いときは早く強く息をするんだ、痛みに負けて意識を失わないように。
刺すような激痛でしばらく動けなかった。救急を呼ぶべきなのか逡巡した。
だが脈とはリンクしていなくて表面的なものだ。様子をみよう。
小一時間ほどすると小康状態になった。
その後の検査では異常なし。
いや痛みは異常であるが、心不全など緊急性を要するものではない。
本日4/24
熱は完全に下がり、一昨日まで鉛のような身体に感じた倦怠感も消えた。
胸の痛みは残る。
別れた妻は自己憐憫、依存心、責任転嫁の呪縛から逃れられない。
娘もその呪いにかかっている。
まるで塹壕を死守する兵士のようだ。
それを伝えようにもうまくいかない。
自ら自覚して塹壕から這い出ないといけないから。
先のみえない塹壕戦の中、その日はつかの間の静けさが訪れていた。塹壕の中で休息する兵士の目の前に、まるで平安を運ぶかのようにひらひらと蝶が漂ってきた。羽根を休めて止まった蝶に、思わず手を差し出し身を乗り出してしまった兵士。その瞬間に敵の狙撃手の弾丸が炸裂した。蝶に手を伸ばすようにして崩れ落ちていく兵士。つかの間の平安の中の一兵士の死は取るに足らない出来事であり、この日前線から本部に打電された戦況報告にはこう記された。
西部戦線異状なし 報告すべき件なし
出口のない罠の中の鼠は暴れ回るばかりだ。