Toujours beaucoup

いつまでもたくさん

戦場のメリークリスマス

10代の終わりごろに母親と初めて二人だけで観たのがこの映画。
母親の提案で行ったのだが、なぜだかは分からない。
今だから分かるのだが、映画自体はちょっと異質な映画で当時の僕には早すぎたし、当時の北野武や坂本竜一がストーリーの本質を理解していたのかどうかは分からない。
ホモセクシャルな表現ばかりが気になって、捕虜収容所長の坂本がメイクしているのも理解不可能だった。
でも、いまこのダイジェストをおさらいして理解した。
まずはデビッド・ボウィ。
厳格なイギリスの階級社会の底辺から、光の当たる世界に這い上がってきたばかりの彼は、恐ろしいほどのオーラを纏っていて輝いている。だが歯並びはガチャガチャで出自がばれてしまう。
だがボウィは、子供達の人権が蹂躙される厳しい戒律のパブリックスクール出の将校役(そこで実弟を見殺しにしたトラウマがある)を見事に演じていたような記憶がある。ロアルド・ダール『少年(a boy)』『単独飛行(going solo)』の世界である。
軍隊のホモ指向が少女マンガ化した日本陸軍(とにかく精神性が幼い)の将校役が、メイクしたボンボンの坂本竜一というのがまたいいではないか。
屈折したイギリスの階級社会と正義(ノブレスオブリュージュのような)、イギリスに少し似た煮込みすぎた島国文化の日本の独特な男社会を、南の果ての島の人食い族の煮えたぎる窯にぶち込んだような世界観。つまり戦争社会が見事に演じられていたのではないか。
母親がどう感じていたのかは知らない。
ほとんど会話のない母子であったから。
最後の最期まで。
だけどおかげで、最後の1年の会話はほとんど思い出すことができるし、2人きりだった50年前の岐阜の長屋の借家時代の会話まで思い出すことができる。
日付が変わってしまったけど、メリークリスマス。
そして明日は僕の誕生日だ。
山羊座のAB型だし、いつもクリスマスと誕生日がごちゃごちゃになってしまうけど悪くはない。

 

 

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