この先立ち入るべからず
彼女の家は袋小路のような一画にあった。
この先行き止まり
そんな注意を促す看板が所々にあった。注意しないと元に戻れなくなる
彼女の事はもちろん大好きだった。愛していた。
その気持ちはどんどん大きくなっていった。
彼女の一番の魅力はストレートに喜怒哀楽を伝えてくれたとこと。
僕は気難しい人間なのか、なかなかそうやって心をさらけ出して接してくれる人はいなかった。
もちろん彼女の笑顔とか雰囲気も大好きだった。
物凄いオーラのある子で彼女が現れるとまわりの空気が変わるのが分かった。
彼女と街を歩くと獣の眼が光る森の中を歩くような緊張感があった。
でもそれはボーナスみたいなもん。
だが彼女と付き合うことは当時の立場ではあまりいいアイデアとはいえなかった。
だけどプライベートで本当の意味での友達が欲しかった。
彼女の真っ直ぐな感情表現はとても好きだった。下手くそな嘘もふくめて。
ふと寂しいときにとりとめのない会話をする。黙ってそばにいてくれるだけでもいい。お化粧してるのを眺めているのも好きだった。
彼女の友人たちもとても良くしてくれた。
だけど彼女のことを好きになりすぎてしまった。
とてもじゃないけど友達という枠の中で我慢する事は出来なかった。
だが我々(一方的な意味で)はどこへも行けないのは明白だった。
この先行き止まり。
迷い込む前に引き返したことが正しかったのかどうかは分らない。
希望は手の届かないところへ去ってしまった。
時が経てば全て消え去っていくだけだった。
もうすでに別の世界の昔の話。