Toujours beaucoup

いつまでもたくさん

A

初めてのデートの場所に急いでいた。

初デートに遅刻するなんて死刑だ。待ち合わせのマックの前に車をアプローチしていくと、彼女ともうひとり中年女性が待っているという謎展開。彼女をAとしよう。

遅れたことを詫び、Aから紹介されたのはなんと彼女のママだった。いきなりの親子どん…いや失敬、母娘のとデートである。とはいってもランチだけだから(そういう約束だった)、母娘をピックアップしてデニーズ(これも指定だった)へ向かった。

つまり面接だったのである。

この子は好き嫌いが多くて野菜を食べない、もっと食べなきゃだめ、小さいころの話など、ほとんどがママと会話しているだけで、Aはニコニコ笑っているだけだった。ちなみに素直な性格で、小顔で死ぬほどかわいくて、パンツもウエストに合わせるとヒップが入らない系の、健康的でノースリーブが良く似合う魅力的な子だった。一緒に街を歩くと野獣どもの眼が光り、一緒に服を選んでいても女性店員が心なしか冷たかった。

ランチのあと少し買い物をして、面接結果は奇跡的にOKだったようで、その後はステップバイステップ、ピアノピアーノでね、と。

最初のうちは門限が進学塾に通っている小学生より早かった。

夢のような日々だった。

もちろん壺やラッセンの絵は買わされなかった。

でも、だんだんと間違えたドアを開けたような気がしてきた。

Aのことは「かわいいし、いい子だな」というキッカケで、一目ぼれしたとか、好きで好きで始まったのでもなかった。普通に好き、そんな感じだったのかな。

どんどん僕への依存や束縛が強くなってくる。ちょっと僕には荷が重すぎるような気がしてきた。深く傷つけてしまいそうで怖くて喧嘩もできない。

あまりにいい子すぎて、もっと上のステップの男と付き合ったほうが彼女や家族のためにもなる。いずれにせよ傷つけてしまうのなら傷が浅いうちのほうがいい。

 

おまけに、刺し違えるように別れて遠くに行った前の彼女が帰ってきた。まだ気持ちは強く残っていた。これが決定打となった。

Aに別れを告げたとき。大きな瞳にあっという間に涙が溢れ、落ちた涙のしずくが、Aのバッグに落ちて音を立てた。

高円寺ららぁさんの、かっこつけたいお年頃のお話で思い出した懺悔話。

 かっこつけたいお年ごろの男性と、引っ張られる女子達 - 女だから言えること | 引きこもり、精神病からの生還

 

Oasis-「Don't look back in anger」

 Please don't put your life in the hands
Of a Motorbike Racing
Who'll throw it all away

ところが、どっこい、私のような、男なんて所詮、弱くて、カッコ悪いものだって、完全に割りきっている女の前では、男性たちは、まー、みんな、表沙汰にしてないカッコ悪い部分をよく、しゃべってくれる。嫁と子供をおいて2年ほど若い女の家に転がり込んだことがあるとか。表向きは羽振りよくしていても、数千万の借金があるとか、ベンツに乗ってるけど、あれは買ったんじゃなくて、レンタルだとか。愛人のロシア人のパンツがやぶれてるとか

今となっては、愛人のロシア人のパンツが破れているというのが実にいい。