深夜の彷徨
何回か寒の戻りを繰り返すうちに気がつくと完全の春の萌しになり、ふっと風の向きが変わるように、女性の匂いが変わる瞬間がある。
ああ、心を開いてくれた、気を許してくれたんだな、と感じる。
同時にそれは責任を持つことでもある。
でも、もう二度とそんな時はこないんじゃないかと思うと、最後の夏休みの終わりが近づいているような気持ちになる。
もちろんそんな気持ちに蓋をしても、どうってこと無いのもわかっているし分相応だ。
さて
どうしたもんだか
あんたはこのことを忘れちゃいけない。
めんどうみた相手には、いつまでも責任があるんだ。
(アントワーヌ・ド・サン=テグジュペリ作、「Le Petit Prince(星の王子さま)」内藤濯訳、岩波少年文庫版より)