Toujours beaucoup

いつまでもたくさん

SUSHI

 なにしろもう結婚して20年になる。その節目で何かしらのイベントやらねばならぬ。そして相方のオファーのあった寿司屋へ行ってきた。


 一見客として前日昼に電話でコース内容とテーブル席を予約したのだが、夕方に電話があり実はテーブルは予約がありカウンターに変更して下さいとのこと。常連客の予約が後から入り、こっちは二人だけだし一見だからカウンターにまわされたのか。商売やってるからそういうのはわかるしさほど気にならない。テーブル席は相方の希望で自分はむしろカウンターの方が良かったから快諾した。

 当日店を訪れると平日の夜にも関わらず繁盛している。駐車場はリース車に良くありがちなセダンと、小金を持っている層が乗りそうな差別化を求めるような500万くらいのセダンが数台。案内されたのはカウンターの末席で、トヨタの組立工のごとく忙しなく働く若い衆の前。メインの席は大将が客の相手をしながらゆったりと握っている。もう自分はおっさんだから客の雰囲気でどういった店なのかは何となくわかる。フリー入ってくる常連のスペースも若干空けているようだ。


 大将の前のメインのカウンター席。大将の知り合いの40代製造業勤務風の旦那さん、妻と子の3人家族。中学生ぐらいの男子で成績は中ぐらい。少しダイエットした方がいい。ひょっとしたら高校の入学祝いか何かなのかもしれない。そして常連の50代の中小企業経営風のハゲ散らかした口うるさい旦那さんとその妻。つまみながら飲み、盛んに若い衆をいじくっている。そしてこれも常連の40代後半の自営業風男性客一人。お好みでつまみながら冷酒を飲み、隣の常連夫婦の話しに加勢している。

 二階の宴会席も賑わっているようだ。1階の座敷は予約済みとなっている。そして本来お願いしたはずのテーブル席はしばらくすると、スーツ姿のサラリーマングループが入ってきた。大手保険会社営業の1部署ごと入ってきた感じだ。こいつらが横入りしたんだな(笑)やっぱり。でもそれがその店のスタイルだし自分は気にしない。要するにこれがうちのやり方だから、一見さんは隅っこで大人しく食ってなってことだ。

 しばらくするとそのテーブルはすっかり宴会モードで上司のリードに下品な笑いが繰り出される。居酒屋行けばいいのにと思ったけどこれは考え方の違いだ。他にも30代から40代の駐車場のセダンの主らしい、きちんとスーツを着こなしたサラリーマンが何人か別席にいる。

 さて実は相方はこの店では面が割れている。ちょっと離れた位置のカウンター越しの大将は気がつかないふりを決め込んでいた。ただ見せる仕事、従業員教育を含めてのプロ意識は高く店も清潔で繁盛しているのも良く分った。握りは手の込んだ丁寧な仕事で、相方は締めの玉子まで量、ペース、味ともに満足していたようだった。自分の好みではなかったが美味しいと思うし店の雰囲気も悪くない。

 ただ一時間半を越える時間は自分には長すぎた。団体客の握りを造りながら合間に個人客を握るといった流れになるのでどうしも間が空きすぎてしまう。あるいは飲み系スタイルなのかもしれない。残念だったのはあさり汁。大粒で身もしっかりしているのだが、作り置きしていたのか旨みが抜けたような感じで今ひとつだった。朝獲りの新鮮なあさりを先週食べたばかりだったから余計にそう感じたのかもしれない。これは相方も同意見。

 きちんとした寿司屋はめったに行かないので、相対的な判断はできず全くの主観的な感想になってしまうけど、内容的には金額相応といった感じじゃないかな。料理そのものだけではなく、お店やら人間観察でも興味深い時間だった。

 寿司屋を出ると駐車場の他の車は消え、ぽつんとシルバーのハイルーフの1BOXが居心地悪そうに主の帰りを待っていた。