Toujours beaucoup

いつまでもたくさん

舫いを放て

日曜の深夜新東名を東へひた走り、東京インターから首都高3号渋谷線に入る。

 渋谷の街を通り過ぎるとナチスの高層防空要塞のような森ビルが次第に大きく見えてくる。

C1環状線左回りに入り、霞が関トンネルを抜けると皇居のお堀沿いをしばらく走ると、大手町のオフィスビル群。

 そこからC1を離れ6号7号箱崎方面へ。

箱崎で千葉方面の7号と別れ、6号向島線三郷常磐道方面入ると高架は隅田川沿いを北上する。

 墨田川には関東大震災復興事業で架橋された意匠に富んだ重厚な橋が次々と現れる。

威厳のある橋たちと浅草はじめレトロな下町の街並み、背後に群立する高層ビル群、増殖しつつあるタワーマンション群、そしてゆったりと大きく流れる隅田川と屋形船たち。ここの桜も実に見事だ。

 ノスタルジーと時の膨張との対比が織りなす景観は、東京で一番好きで、首都高というのは僕にとって一番の東京見物だ。

 東京出身の同級生はレインボウブリッジからの鳥瞰した都市景観が一番東京らしいといった。

 駒形橋をすぎ浅草付近で右方向には、アサヒビール本社の金色の巨大なアレが見えてくる。

 ふと助手席の娘をみるとその物体を見てクスクス笑っている。

 いうなれば空飛ぶ金色の糞だ。
もちろん糞なんかではない。「聖火台の炎」であり金色の炎は「新世紀に向かって飛躍するアサヒビールの燃える心」を表わしているそうだ。

 一昔前、レースでもてぎやSUGOそしてツクバサーキットに行く時は首都高で夜の東京の街を潜り抜けて行った。まだ押上タワーが無かったころだ。

 東名から3号渋谷線に入るころ、まだ小さかった娘がこっそりと起き出して車窓を眺めていた。

そしてアサヒビールの横を通るたびに僕は誰彼となく「おいウンコが空を飛んでいるぞ」なんて言っていた。

 こっそりと起き出して車窓から見えるダイナミックな東京の街をじっと眺めていた小さかった娘。

この子は大きくなったらここへ(東京)へくるのかもしれないなと、ぼんやりと考えていた。

それがいま現実となり、大きくなった娘は東京葛飾でアトリエを間借りして作家活動をしていくことになった。

 そしてまた同じ道のりで首都高を辿って引っ越しをしてきたのだ。

多分娘はもう帰ってこないだろうと思う。

 寂しくもあり喪失感もあるが、『トニー滝谷』のラストの「トニー滝谷は今度こそ本当のひとりぼっちになった」と同じように、然るべきポジティブな帰着であると考えたい。

 ご尽力いただいた関係者各位には深く感謝いたします。

 

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