Toujours beaucoup

いつまでもたくさん

気弱な支配者

組体操で僕はいつも一番上の役だった。

カーストでいう頂点の役割。

身体が小さくて軽くてそこそこ動けたから。理由はそれだけ。

 

気持ち良かったかって?

気分は最悪だよ。

怖かったから?

そりゃ怖いさ、でもそれが理由じゃない。

まずは強制された挑戦というのは最悪だった。

 

いつもピラミッドを支える底辺が気楽そうで羨ましかった。崩れて潰されたって知れてるだろ。こっちは奈落の底へ落ちるリスクに晒されていた。滅多にないのだけど実際に崩壊して人の土石流に飲みこまれると体操服もぐしゃぐしゃ。靴も脱げてしまう。

 

一番嫌だったのは斜辺を登って行く時だよ。

クラスメイトの背中を慎重に一段づつ登っていく。人間の階段だからね。ぐんにゃりとした生身の人間の背中を登っていくのはとても嫌なものだ。

選ばれた強い人間ばかりのカーストならいい。

ところがこのカーストの中には自分が軽くなるように体重をかけるやつもいる。ブレイクした瞬間に人を踏みつけようと企んでいるやつもいる。そして弱い人間もいる。背中が体力の限界の恐怖に竦んでいるのはすぐに分かる。

○○くんごめんね。できるだけうまくやるよ、少しの間だけがまんしてね。僕だって好きでこんな事しているわけじゃないんだ。

それからおまえら、このカーストを生かすも殺すも僕次第なんだ。

わざとぶっ壊すこともできるんだ。でも○○くんのためにしないだけなんだ。

おまえら屑はだまって底辺を支えていろ。

組体操の間だけは僕が支配者だ。

 

あなたが憎くはないけれど - 傘をひらいて、空を

このブログを読んで思いだしました

 

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