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Toujours beaucoup

いつまでもたくさん

ワイルドカード


「金がない。弟には隣りの島へ渡る金がない。俺もそうだった。金を作るために俺が何を売ったか知ってるか?」-「知らないけど、それが必要だったのならそうすることがよかったんじゃない?」-「だから嫌なんだ。だからリコが嫌なんだ。そうして受け入れてしまう。」
「驚いて立ち退いたり、蔑んで罵ったり、そんなことしないで微笑んでいる。狡いよ、そんなの。」-「狡いよ、私は。見たいものを見たいから。」-「弟を連れて行ったらどうなるか。自分で作れなかった金の対価は付き纏う。俺が売ったようにしていつか支払わされる日が来るのさ。」

リコさんの話を読んで「弟も連れていけばいいじゃん」と考えた。でもそれには兄も反対している。

スモーキーマウンテンの人々の事を思い出した。

スモーキーマウンテンは、都市のゴミ投棄でできた巨大なゴミの山で、自然発火した煙が立ち上る姿から名付けられた。

朝夕は深い霧に包まれ、お伽の山と呼ばれるテネシーの Great Smoky Mountains のブラックジョークだという。東京にも夢の島というスカベンジパラダイスがあった。

スモーキーマウンテンには、スカベンジャーと呼ばれるゴミ拾いで生計を立てている人々が住み着いていて貧困の象徴とされた。

そのスモーキーマウンテンに女優さんが訪れたテレビの企画番組。仲良くなった女の子に「私が進学できるように援助してほしい」と頼まれた彼女は「それではあなたのためにならない、自分の力で学校へ行くべき」と諭していた。

国や親を選択することの出来ない子供に、自分の力で這い上がれという正論で片付けていいのか。スモーキーマウンテンの子供たちには幸せになる権利はないのか。

正論の国の女優さんは母国の日本に頑張ってたくさん納税して、日本がスモーキーマウンテンのためにODAして教育インフラを整備すればいいのか。

もしくは番組の企画で彼の地に学校を建てればいいのか。

でもODAはその子たちまで届かないだろうし、学校を建てても行ってる暇ないだろう。

気の毒な心臓病院手術のための募金は良くて、スモーキーマウンテンの子供にチケットを差し出すのはその子のためにならないのか。

「それではあなたのためにならない。自分の力で学校に行くべき」

努力すれば自分の選択をできる正論の国にいる僕は何を思えばいいんだろう、僕はなんて言えばいいんだろうって思ってた。

でも正論の国の女優さんは、スモーキーマウンテンに物見遊山に行ったわけではなかった。

スモーキーマウンテンを契機にして、国際NGOに携わっているようだ。



兄は対価として魂を売ったという。
弟を連れて行ったらどうなるか。自分で作れなかった金の対価は付き纏う。俺が売ったようにしていつか支払わされる日が来るのさ。

配られたカードでは絶対に上がれない者に、ワイルドカードをもらえる権利はあるのだろうか。

人生のツケはまず一番きつい時にくる。




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