夢のオチは白衣を羽織ったLele Ponsだった
田舎の村落の細い路地に迷いこみ、路地に佇む老婆が言う。
「おしゃあどこ行くだ?」
城下町に路地は必ず曲尺手になっている。
道路の真ん中に取り残されたご神木。
北関東の時間の止まった街。
見知らぬ土地を彷徨うのは様々な感覚が刺激され夢中になる。
街を彷徨うロードムービーのような夢も、夢の中で夢中になる。もちろん夢だとわかっていて醒めないでくれと思いながら彷徨う。
郊外の住宅地のゆるい坂を下っていき右に曲がると実家がある。
豊橋の実家の景色と、沖縄時代の家の先の袋小路がミックスした景色だ。
-------夢の中はそういうものだ。--------
白い光の世界。坂の下の右手の奥には出来たての人気の無いコンビニが白い風景画のようにある。左手を登ってくる老婆は母親だった。
「どこかへ出かけるなら乗せていくよ。コンビニ出来るんだね。奥に大学が出来るからいいかもね。」
いつのまにか先に大学が出来ることになっている。
振り返ると住宅地が造成しつつある山になっている。林の中を下りてきたふたつの道が交わったところで、大きく開発の手が入っている。
------そういうことか。よく分からないが納得した。なにしろ夢の中だからね。-----
iPhoneで写真を一枚。振り返って下った先の地平線の奥に海が見える。
ああ、行かなければ。
時間が無いけど確かめなければ。
ノルマンディー海岸のように陸が侵食された端は、海に向かって急激に下っている。細く曲がりくねった徒歩道を下りていくと一旦海が見えなくなる。すっかり日が暮れてきた。
視界が開けた。すっかり日の暮れた海の先にマツダの橋が見える。なぜか広島の丹那港の母親の実家の景色になっている。沖縄の海と並び僕の原点となる母の海だ。
iPhoneの画面に注意深くタッチしてポイントを絞る。
満足した僕は引き返して上っていく。上りきったとこの倉庫に道が入っていくが倉庫のドアは閉まっている。夢の中では状況がどんどん変幻していく。人が通れるぐらいはドアがスライドして中に入ることができた。
中には黒いパーティドレスの上に白衣を羽織った女性が居た。顔にはアフリカ大陸のような黒いシミがあるが、若さと美しさはそれを問題にしない。
------この女性は週末のハロウィンで仮装した女性たちを現しているのだろう------
「遅くなってすみません。」
民芸品が並んだカウンターで僕が言う。
倉庫の入った海側のドアの反対が正面で、その先には元に戻る整備された道が続いている。
「1,110円です」
----それは財布の中にある五千円札と1万円札以外の全額だ。千円札と硬貨で1,110円。なぜ彼女にはわかるのだろう-----
「監視モニターで連絡があって来ました」
そうかそれでパーティ会場から抜け出て来たような格好なんだ。
夢は突然終わる。
分析
・豊橋、沖縄の家と広島の祖父母宅の原風景。
海、山、林、曲がりくねった道、袋小路、港、マツダの工場へつながる橋、渥美半島の太平洋岸は河岸段丘でノルマンディー海岸に似ている。先週訪れた渥美半島の海がスイッチとなったのだろう。
・東海道新幹線の保線員として経験した、東海道、中山道沿線の様々な深夜の町の彷徨。
旧い町、血の匂いのする町、息の詰まりそうな町、カルトを感じる町、どこへ行って も同じ様なフランチャイズのコンビニと飲食店だらけのインター付近の街道筋。
高架の幹線から見える街の生活の裏側と工場群。新名神高速道路終点の大学を基軸とした人工的な街と、旧くからの村落が入り交じった、いびつな土地。
・ハロウィン
Lele Ponsの仮装がおそらくキーになった。