Toujours beaucoup

いつまでもたくさん

ある兵士の話

takasuka-toki.hatenablog.com

 

僕はもう、奥の細道の終着地が見えてきたような歳だから、何をいっても後出しじゃんけんになってしまいフェアではないのですが。

壮絶な環境を勝ち抜き力を得た、とまではいかないけど、少なくとも壮絶な環境を潜り抜け自分を律するようにはなれたのかもしれません。

「強く正しく生きること」

我慢と自己矛盾への葛藤で、つまり漂泊でもあり、舟の上に生を浮かべ、馬の口をとらえ老いをむかえ、日々を旅とし旅を住処にするようなものなのでしょうか。古人も多く旅に果てました。

と、松尾芭蕉さん。

 

軍人だけで300万人が亡くなり、日本人の平均寿命が20代になってしまった大戦期の日本兵の手記を読むと実に考えさせられます。

多くが故郷の村を出て10代から20代の青春期を過しています。

その軍隊生活というものはブラックなんてもんでなく、弱肉強食の洗脳教育で、自殺者や脱走者、反逆者も生み出しました。多くの犠牲者を出した戦艦陸奥の謎の爆沈事件も、あまりの虐待への復讐による下級水兵によるものとも言われています。

帰る場所も逃げる場所も無かったのです。また戦死と事故死では、遺族への保障が全く異なるのも逃げ道をなくしました。

ただその時期の若者はまだまだ子供なのです。訓練ですら簡単に死んでしまう危険な仕事で、実際に多く殉職者が出ています。戦場は言うに及ばす。軍隊教育の強い兵士を作るための洗脳恐怖教育は、反面自身を守るためでもありました。

また興味深いのは、軍隊の職種、職級とでもいいましょうか。それによってもずい分と異なりあました。生い立ちの臧否に関わらず、便宜的に5段階評価の通知表で表現しますが、オール3のようなものは下級兵士として毎日のように殴られ続けます。手記を読むとその体罰への詳細な記述や批評が目立ちます。また海軍と陸軍では弾に当たって死ぬほかは、水死するか餓死するかの大きな違いがありました。

ところが通知表の成績が上がるにつれ状況は異なってきます。戦闘機パイロットともなるとオール5の手のつけられない札付きのガキ大将ばかり。体罰やしごきも早いうちに卒業し、またそれは通過儀礼ぐらいにしか言及されてません。

 

田舎の村を出たある水兵の話。

「整列」といって連帯責任の懲罰で日課のように尻バットで歩けないくらいやられ続けます。その辛さ、逃れるための駆け引き。彼は体罰を必要としない優秀な人間でそれには心の痛みをも感じます。その後見出されて高等技術を習得するために上級学校進学し、そこではさらに厳しく殴られ続きます。座学も厳しいのですが実習訓練で精根尽き果ててしまい、座学では睡魔と闘う毎日。国家機密のために教科書もノートも授業時にしか使用できないので頭に叩き込むしかないのです。試験もカンニングできないような仕掛けがあります。

でも彼は持ち前の頑張りでクリアし、駆逐艦で最前線の目となり、最後は菊水特攻で自艦が航行不能となり自爆処分となりますが何とか生き残ります。大混乱の中に自爆処分される炎の中に逃げ遅れた同僚もいた修羅場から。

 

そして田舎の村を出て水兵からエースパイロットにまでなった兵士の話。

極貧の家の、手のつけられないガキ大将。学業も優秀でお金持ちの叔父の援助で、東京をおそらく1中かなにかを受験するが惨敗。青学の前身にあたる学校に入り、人の何倍も頑張りますが田舎者の限界で挫折します。

失意のまま田舎に戻り日の出から日の入りまで農作業に追われる悶々とした毎日。大空への憧れを実現するために、今度は海軍航空少年兵募集に活路を求めます。

しかしもっとも危険な職種のために、勝手に叔父に水兵に志願を換えられます。

失意のままの水兵ですがそれでも成績優秀で、花形の大型戦艦の主砲の配属になりますが、初志貫徹でそこで航空兵へ志願します。栄誉職を蹴ってまで航空兵を目指すということで、舟もろとも沈んだり吹っ飛ばされる可能性が高い、単純労働の船底の弾薬運搬係に左遷されます。彼も「整列」で殴られ続けますが、そんなことに構っている暇はありません。就寝時間も甲板の上に抜け出し月明かりで受験勉強、それがばれると毛布の中で明かりを点し勉強。

航空兵の試験は水兵のときと同様に、チビでもやしで身体検査をなかなかクリアできません。ただ数字的な問題なので持ち前の粘りでクリアします。つまりその強い意志を買われたのではないでしょうか。

晴れて予科練航空隊へ。そしてさらなる地獄の特訓です。

もちろんここでも、就寝時間に街灯の下で勉強、ばれるとまたも毛布の中で勉強。艦船乗り組みより飛行機はもっと危険です。ちょっとしたミスで簡単に死ねます。また優秀な人間が多いため、自ずから訓練にも真剣に取り組んだためか、懲罰も少なくなってきます。

その後最前線に。生き残ったのは偶然の巡り合わせや運も大きいのですが、やはり生きるこるための強い執着心や、なんだかもう動物的な勘も備えていたのが、手記から感じられました。

 

軍隊の洗脳恐怖教育に関しては、イギリスやドイツでも同様でした。特にイギリスは学校教育から寄宿舎教育によるシゴキで鍛え上げていました。もちろん気の毒な脱落者も多くありました。

 もっともスタートから下士官教育をうけ指導者になっていくようなものは、そもそも生い立ちからして裕福であったりして、敷かれたレールが違います。程度の良くないものは糞指揮官になったりしています。

それは見えない階級がある現代社会と同様ですね。

生き抜いたのもの達の話を聞くと、それも現代の構図にも少し似ています。

口減らしのために軍隊に入り下級兵士になるものたち。ただその中にもまれに優秀な者が居て蜘蛛の糸をつかむ者もいました。戦争末期になるにつれ、未来のために温存されていた高等教育をうけていた若者たちも狩り出されます。即戦力として特攻要員などで。

裕福な上流階級出身で安全な軍隊生活をおくったもの。私服を肥やしたもの。

そして軍隊にすらお呼びにかからなかったオール2以下のものたち。

そして家族と社会とのあり方。

ああ野麦峠

悲惨な顛末となった気の毒な哀しい女工さんの物語なのですが、過酷な労働ではあるのですが、そういうものだったので、トヨタ期間工のように無事満了するのものも多く、また能力給でひと財産を築き上げ故郷に錦を上げたものもいます。

 

ただ軍隊も女工さんも共通するのは、家族を人質に取られていたような側面です。

この点現在では表面上はかなり改善されているようですが、無くなったわけではありませんね。

 

工業高校の求人を見ると大手メーカーの技能工募集に印象的な事が書いてありました。

評価平均**以上。運動部経験者優遇。

そうでないと耐えられませんよ、行間に書いてありますね。

 

結論としてマッチングの問題なのですが、国はやはりレベルが高く均質な社会を作るために均質な教育システムを敷き、それから外れることは困難な生き方の選択であるし、そこには家族の経済力も大きく関わってきます。

毒親の問題にもつながりますね。

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僕のブログのARROWでは、未完なのですが、優秀で家庭も裕福ではあったが親に大きな心の傷を受けた女性の思い出話をしています。

珈琲ゴクゴクさんの、引用した下述のお話は彼女のことを思い出しました。

あなたの期待するような”あなたの全てを受け入れてくれるような人”は絶対に出てきません。

わけもなく不機嫌になったり、相手を怒鳴りつけたり、自殺未遂をしたりして、相手を試すのはやめましょう。

あなたの全てを赦してくれるという事は”相手に何をしてもいいという事”ではありません。

人を赦すということは、相手を信頼することです。

これまで生きる中で、あなたは沢山の人に赦してもらったと思います。あなたも少しづつでいいから、人を信頼してみませんか。

今までも大変だったし、これからも楽ではありません。

けれど誰にだって喜びを分かち合い、弱さを補い大切な誰かと歩いていく事ができます。

 

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