辻斬りはバーの中で
高級テキーラは悪魔のよう繊細でやさしかった。
そして真のバーテンのいるお店に。
居合い抜きのような時間が流れた。
一本13万のウイスキー。
スクリューキャップを握ったバーテンの手が何回か空を切った。バーテンは逡巡した。でも俺は開けるだろう、そんな顔をしていた。
ワンショット28ml 20杯分。開けるということは何を意味するか。
野暮なことは言うまい。
サプライズショット要員としてスタンバイするのも立派な目的だ。
開けた瞬間に空気の質が変わったのが分かった。神聖なる儀式の始まりだ。
僕はずっと水のことを考えていた。
台湾の高級ウイスキーもあった。
ブライトンは硬水だ。石鹸の泡が立ちにくい。
メキシコはどんな水なんだろう。