虹のかなたへ ダミー・デミオ
マツダの自動車衝突実験施設では日々、車の衝突安全性向上のために、ダミー人形を乗せた車が最悪の事態を想定して激突し、彼らが人柱になっている。
実験場に案内されたダミー・デミオ。自分の仲間を乗せた車が全速力で壁に激突し、すさまじい衝撃音とともに悲惨な運命に陥っている。
僕もそうなるのですか??
君の役目はみんなのために犠牲になることだ。
マツダの衝突実験場から、テスト用の人形がロードスターで逃走した。クルマに乗って壁にぶつかる自分の運命を知ってしまったからだ。逃げ出したダミー人形は建物の外に停められていたマツダ・ロードスターを発見、これに乗って走り出してしまう――。
街に飛び出したダミー人形が体験するのは、初めての出来事ばかり。自分の逃走を報じた新聞を発見したり、ライブハウスではっちゃけたり。そして、人間の女の子と恋に落ちる。2人はロードスターでドライブし、ピクニックでつかの間の平穏な時間を過ごす。
この時がいつまでも続けばと彼は願う。でも夢に見るのは恐怖の衝突実験ばかり。
逡巡するダミー・デミオ。
彼女のためにも、みんなのためにも行かなければならないんだ。
それが僕の定めなんだ。
意を決し、衝突試験場に戻ったダミー・デミオ。
ついに僕の順番が来た。真っ白なロードスターの運転席に身をうずめ、シートベルトをしハンドルを握る。僕のロードスター、彼女のロードスター。
本当に行かなければならないのか?ダミー・デミオは深く息をし目を閉じる。
そうだ、行かなければならないのだ。
奥田民生みたいな面をした上官が肩のそっと叩く。
頼むぞ、ダミー。
虹は見えても渡れない
雲をつかむような浮かれた話
虹を渡って雲をつかんで君にあげるよ
ほんとの話
笑う人には笑っといてもらおう
風は西から強くなってくる。
明日へ突っ走れ
未来へ突っ走れ
魂で走れ
明日はもっといいぜ
未来はずっといいぜ
魂でいこうぜ
「風は西から」
奥田民生さんは広島出身。そしてマツダも広島に生まれ広島に骨を埋めた自動車メーカー。絶体絶命のピンチをなんども潜り抜けてきた。
觔斗雲(きんとうん)のように飛ぶように走るロータリーエンジンを実用化したのはマツダだけだ。
ロータリーエンジン魂に持ち、極東からやってきた身の程知らずのメーカーとしてに何度も挑み続けたルマン24時間レース。もう本当にこれで最後だ、これ以上続けられない。その最後のチャレンジで執念と魂の優勝をした。
マツダの前身は東洋工業といいい、ひょっとしたら西洋に打ち出ることを意識した社名だったのかな。
そして今では独創的は技術とデザインが魅力な、つまりソウルフルな唯一無二の自動車メーカーになった。
とっても切ない映像だったけど、僕はどうしてもダミー デミオ君がカミカゼパイロットとの姿とオーバーラップしてしまった。
ルマン24時間で優勝したマツダの787Bの官能的なサウンドもその想いがいっそう強くなりますね。