Toujours beaucoup

いつまでもたくさん

深夜の訪問者

深夜二時ごろ。盲人の気持ちが分かるような闇夜だった。

永遠に終わらないような気がしてくる、砂漠に水をまくような仕事をしていた。

 

「ぬおーっす」

 

地響きのように何かが膨張し弾けたような、叫びのような声を感じた。目を向けると仁王像のような男が立っている。

 

ヤツだ。

 

小中のクラスメイトで、優れたスキルを闇を真っ直ぐに歩くために活かしてきた。制御できない暴走列車のエネルギーは誰にもコントロールできない。

 

頭の回転がいいから話は実に面白く、また巧みなコントロール下にあり、まるで週刊現代週刊文春をコンビニで立ち読み しているかのような感じだ。

 

ヤツとは久しぶりだ。いつも何故か人生の節目のようなタイミングに出会う。前回会ったのは5.6年前のファミリーレストラン。気配を感じ対角の席を見るとヤツが手を振っている。ちなみに風貌はというとまさに偉丈夫。大太刀を振り回す戦国武将のような佇まいで、竹内力と並んで立っても引けを取らないだろう。

 

我々の席にやってきて中学生の息子に話をした。

「いいか?勉強をしろ。学がないと人生話にならないぞ。」

学校の先生が諭すのとは次元が違う説得力だ。

 

昨晩彼とは近況と昔話をした。相変わらず並外れた記憶力だしストーリーテラーだ。

 

「なんでバイク屋をやっている?」

 

そう問われた。

彼は僕のサラリーマン時代も知っている。

 

「何でって色々あるけど、偶然のめぐり合わせや流れが大きいよ。マルマル君だってそうだろ?」

 

彼はコンマ5秒考えて嬉しそうに笑った。

 

「こうなれたらという漠然としたイメージはあったけど、特に強い動機じゃない。機会があっただけで導かれたようなもん。そういうことだろ?」

 

その通り。