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Toujours beaucoup

いつまでもたくさん

深夜鈍行


深夜鈍行 150311 - YouTube

 

月日は永遠に通り過ぎていく人の波のようで、行き交う年もまた旅人である。
船の上に生涯を浮かべるもの、馬の口を引き老いを迎えるものも、日々が旅のようであり、旅を住処とする。
多くのものが旅のなかで死んだ。
 
僕もいつのころからか、風の先の終わりをみていたら、さすらわずにはいられなくなった。
雲の形を真にうけてしまった。
 
海の波の続きをみていたら、さすらわずにはいられなくなった。
心のすきまに入りこまれてしまった。
 
中国大陸の戦争から帰ってきたあと、長距離ローカル線の車掌として勤め上げた男がいた。
国鉄時代はある意味優雅に仕事をすることができた。車掌車と言う独立した車両があり、長机、長いす、トイレやだるまストーブも備え付けられたちょっとした居住空間だった。
男は業務の空いた時間に、そのアットホームな空間を利用して料理に勤しむようになり、おかげで退職するころには料理もかなりの腕になっていた。
 
太平洋沿岸部の街から、南アルプスを目指し険しい山岳部を抜け、目的地まで鈍行ではまる一日を費やす。風光明媚な車窓では乗客に解説もしたそうである。
 
戦時国債なみに増えて行く赤字、激しい労務交渉などの影もあった時代。
鉄道に生涯を浮かべたようなその男も旅人だった。
 
ちなみに旅人ではあったが、軍人年金、国鉄年金を合わせて死ぬまで年収400万近くあったそうである。
 
「MIDNIGHT EXPRESS 深夜特急」 隠語で脱走という意味がある。
でも深夜に走りすぎていく鈍行列車には名前はない。
百代の過客のようなものだ。

 

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