Toujours beaucoup

いつまでもたくさん

光の世界への階段

 アフターバーナーの炎と空気を切り裂く破裂音。ジュラルミンに反射する夏の光。ガソリンとセメダインの臭い。空を飛ぶってこういう感覚なんだ。初めてバイクのアクセルを開けた瞬間にそう感じた。少年の頃好きだった物はいたってシンプルだった。
 
 社会のストレスを全て放り込んだような週末の終電の澱んだ空気は、死の彷徨いの果てにやっと見つけた水たまりの泥水の味を思わせた。ガラガラ蛇の威嚇音が聞こえたような気がする。違う。極度のストレスで発する心の軋む音だ。

 不時着したレシプロ戦闘機の折れ曲がったプロペラ。機体は真っ黒い煙と業火のような炎に包まれている。生きたまま丸焼きにならなかったのは幸運としかいいようがない。
 
 奴らは素人に手を出した瞬間に終わる。じっくりと戦術は練った。法的な揺さぶりと相応の補償のもと相手にも逃げ道を残す和解交渉。表沙汰になればやつらは終わる。心理的にもこちらの方が有利だったはずだ。負けるはずのない手だったのに、百戦錬磨のプロには手も足も出なかった。振り返ればテーブルに着いた瞬間には勝負はついていたのかもしれない。もちろんこちらも交渉のプロである代理人を立てるべきではあった。だがそれをするときっちりと決着をつけなければならなくなる。結果として本来の目的を失うことになる。つまり法的に争えば完全試合ができるが代償として彼女は手の届かないところへ行ってしまう。それがやつらの切り札だ。狡猾かつ細心にそのカードの力を最大限に活かす。

  Prisoner as poverty trap
 繁栄を終えた国と頑張ることを諦めてしまった国。その経済格差を利用した貧困ビジネスが裏の世界の資金源になっている。その闇を知れば知るほど世の無常と絶望、そして怒りが深くなっていった。法規制が更なる悲劇をまねくモデルケースみたいなものだ。
 
 手の届くところに望むものはあるのに、そこは毒蛇の巣の中で一歩でも動くと命取りになる。状況は最悪だ。
 
 「しょうがないのよ。」
 それが彼女の口癖だった。
 
「メロスは激怒した。必ず、かの邪智暴虐(じゃちぼうぎゃく)の王を除かなければならぬと決意した。メロスには政治がわからぬ。メロスは、村の牧人である。笛を吹き、羊と遊んで暮して来た。けれども邪悪に対しては、人一倍に敏感であった。」
邪知暴虐に対する憤怒はどんどん膨らんでいった。
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