具志堅さんは今でもヒーローだ
南の島のヒーロー具志堅さんはフラフラだった。
もうお終いなのは判った。精神力だけで闘っていた。涙が止め処もなく溢れた。そしてタオルが具志堅さんに投げられた。「もういいんだよ。十分だ」そんな意味だったのか。
防衛を繰り返す度に具志堅さんが肉体的にも精神的にも消耗していくのが子供心にも分った。それは「いつか必ず負ける日が来る」ということだった。そしてそれが現実だし生きて行くという事だった。でも目をそらして試合の度に祈り続けた。翌朝朝刊を見ると一面に具志堅さんのTKOシーンの大きな写真と見出しがあった。現実を受け入れるしかった。
死ぬ思いで何回勝ち続けても負けるのはたったの一回だけ。それで全て終わる。
具志堅さんには本当に学んだ。
「生きる事そのもの」そんなことを
「引退してからの方が長いんだよ、だからそれを考えて闘え」
アスリートに良く説かれる言葉だ。だがボクシングはそんな事では闘えないのかもしれない。
ボクサーは引退後身を持ち崩した話も珍しくない。でもそれを責める事はできない。人生の刹那に全てを賭けて闘った。残りの人生はおまけのようなものかもしれない。
現在の具志堅さんの活躍は心から嬉しいし尊敬する。
「ラッキー7の5」